ホテル予約サイトに表示されたのは「3泊12万円」
「予算、2泊で2万円だったんですけど…」
今春、都内で開催された大型ライブイベントの参加を予定していた20代の女性は、
宿泊予約サイトに並ぶ価格を見て静かにスマホを閉じた。
表示された最安値は「1泊38,500円」。
場所は駅徒歩12分。朝食なし。トイレ共同。
「せっかくの連休なのに、“泊まる”ことのハードルが高すぎる」
そう語った彼女が次に向かったのはホテルではなく――レンタカーのサイトだった。
いま、“車がホテル代わり”になっている
現在、一部の旅行者の間で静かに増えているのが「レンタカー+車中泊」という選択肢。
その背景には、連休期間中の宿泊費の急騰がある。
宿泊代の具体例(連休中)
- 東京・新宿駅周辺(ビジネスホテル)
👉 通常:1泊 7,000〜10,000円 → 連休中:1泊 25,000〜38,000円 - 京都市内(三つ星ホテル)
👉 通常:1泊 12,000円 → 連休中:1泊 45,000円 - 福岡天神エリア(カプセルホテル)
👉 通常:1泊 3,500円 → 連休中:1泊 12,000円〜
一方、同じ日数でコンパクトカーを借りれば3泊で約15,000円前後。
寝袋とマットを持ち込めば、“簡易ホテル”として十分な居住空間を確保できる。
ある大手レンタカー会社によると、今年のゴールデンウィークは例年よりもコンパクトカーとミニバンの長期レンタルが20%以上増加。
しかも返却場所は“別の都道府県”が多く、旅の移動手段というよりも**“移動型宿泊施設”として利用されている**実態があるという。
業界関係者は語る。
「最近では“寝られる車種”の指定や、マットやシェードのオプション需要も増えています。
正直、うちの車の半分が“動くカプセルホテル”状態ですね」
「ホテルがダメなら、駐車場で」旅人たちの生存戦略
SNSでは、
#ホテル高すぎ問題 #レンタカー泊 #車内でGW
といったタグが連休前からにぎわっている。
実際に車中泊を選んだ30代男性はこう語る。
「1泊1万円のビジネスホテルより、3日間2万円のミニバンの方がコスパが良い。寝返りは打てないけど、どこでも止まれる自由がある」
また、旅慣れたカップルの間では「温泉→車中泊→早朝絶景」という**“低コスト絶景ルート”**が定番になりつつある。
観光地側も“駐車場泊”を歓迎する流れ?
面白いのは、観光地側でも「車中泊歓迎」を打ち出す動きが出てきていることだ。
たとえば、ある地方道の駅では
- 夜間トイレ24時間開放
- 電源付き車中泊エリア(有料)
- 「エンジン停止・騒音NG」などのマナー啓発ポスター掲示
といった対応を整備。
一泊1000円〜1500円で利用可能な“簡易ステイスポット”として人気を集めている。
「寝るだけに3万円払えるか問題」
改めて問いたい。
「寝るだけ」に、3万円払えるだろうか?
- 到着が22時、チェックアウトが翌朝10時
- ベッドで寝る以外に“滞在した記憶”はない
- 朝食はコンビニ
- なのに3万円
となると、“寝る”という行為の価格と価値が分離し始める。
ある利用者は、
「観光地でホテル代が高すぎて“布団と鍵”にお金を払ってるだけになってる気がした。
車なら、せめてハンドルと景色がついてくる」
と語る。
車中泊にも課題はある
もちろん、車中泊には注意点もある。
- 法律的には“宿泊”を目的とした駐車が禁止されている場所もある
- 夏・冬の寒暖差への対応が難しい
- トイレ・シャワーが確保しづらい
- 長時間の駐車で周辺住民への迷惑となるケースもある
そのため、「ちゃんとした場所で、マナーを守って行う」ことが前提だ。
観光庁も近年、“車中泊観光”へのガイドラインを一部自治体と連携して整備中であり、
“動ける観光客”の新しいかたちとして注目しているという。
まとめ:「横になるための自由」を求めて
連休は本来、“心も体もゆっくりしたい”ための時間だ。
だが、ホテルが高騰し、「寝るだけ」に3万円を求められるこの時代。
人々は今、“どこで横になるか”をめぐって知恵を絞っている。
そして、静かな駐車場にて、
助手席を倒しながらふと考える。
「これは旅なのか、それとも…避難なのか?」
それでも、
朝の陽ざしと一緒に目覚められたなら――
それはもう、立派な休暇なのかもしれない。
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