― 湯船より人間がいらない時代へ
湯船より、掃除の手間と時間がもったいない
「風呂?ああ…なんか実家にあったような」
もはや湯船は、Z世代にとって**“レトロ家電”**のような存在になりつつある。
現在、都心を中心に若者たちの間で急増しているのが**“浴槽レス住宅”**。
シャワーのみ、浴槽なし。しかも意図的。
「狭いから仕方ない」ではなく、「あえて付けない」という選択である。
不動産広告には「掃除不要」「お湯張り不要」「タイパ最強」といった文言が踊り、
家に“くつろぎ”ではなく“効率”を求める人々がこの傾向を支えている。
なぜ若者は「風呂より省スペース」を選ぶのか?
ある20代会社員はこう語る。
「帰って寝るだけなんで、風呂いらないんですよ。
ジムのシャワー使えるし、たまにスーパー銭湯行けば十分ですし」
別のフリーランスの男性も同意する。
「湯船って、なんか“ちゃんと生活してる感”出すための設備って感じ。
実際そんな時間ないし、風呂掃除めんどいし、シャワーで全然OK」
共通しているのは、「便利・手間なし・最小限」という価値観。
“生活を快適にするもの”より、“生活の手間を減らすもの”が重視されているのだ。
湯船に浸かる30分より、TikTok 30本のほうがコスパがいい
なぜここまで湯船が冷遇されているのか。
理由の1つが、今のキーワード **「タイパ(タイムパフォーマンス)」**だ。
「風呂って準備に時間かかるし、入ってる間も片手間に何もできないじゃないですか。
その時間で配信見れるし、チャットも返せるし、アニメ2話いけるし…って考えると、浴槽って非効率すぎる」
(Z世代・会社員)
湯船はリラックス空間ではなく、“時間泥棒”として認識されているのが現実だ。
“レス”は止まらない 次に消えるのは台所、冷蔵庫、そして…
浴槽レスは、ただの序章にすぎなかった。
現在では、さまざまな住宅設備が「なくても困らない」と認定され、次々に“レス化”が進んでいる。
- キッチンレス → 電子レンジ+Uber Eats
- 冷蔵庫レス → 常温保存 or コンビニ依存
- テーブルレス → 床+ノートPC
- 収納レス → 布団下収納+持たない暮らし
いまや部屋は「住む場所」ではなく、「一時的な回復ステーション」へと変貌している。
そこにあるのは、最低限の寝具と通信環境だけ。あとは全部サブスク。
そしていよいよ“人間レス”が始まった
近年の住宅トレンドでじわじわと進んでいるのが、
「人間関係すら“非効率”とされている」現象である。
- 友人とはLINEスタンプで3日分のやり取りを完結
- 同棲ではなく“すれ違いリモート同居”
- 「話すより既読」重視のコミュニケーション
「人付き合いって、タイパ悪いんですよ。機嫌うかがうし、間違えたら地雷踏むし…」
(20代・在宅勤務・男性)
かつて“人間らしさ”の象徴だった感情や共感が、いまや暮らしのノイズ扱いされつつある。
AIの見解:「住宅から人間が退去する未来は現実的」
OpenAIの都市設計予測モデル「UrbanMood 6.1」は、今後の都市居住スタイルについてこう指摘している:
「住宅の“省人間化”は、建築設計上の利便性と精神的快適性の追求によって、今後さらに加速します。
コミュニケーションも人間同士ではなく、AIや音声アシスタントが主導することになるでしょう」
つまり、家の中で一番“コスパが悪い”とされているのは、すでに“人”そのものなのかもしれない。
まとめ:風呂が消えても、人間は生きられるが…
湯船、キッチン、感情、会話。
これまで「暮らしに必要」とされていたものたちは、次々と“レス化”されている。
もちろん、合理的でスマートな暮らしは否定されるべきものではない。
だが、何かを削るたびに、“誰か”や“何か”が少しずつ消えている。
今、家から出ていくのは物ではない。
「余白」「ぬくもり」「めんどくささ」そして、「人間」そのものかもしれない。
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