―万博の未来を超える“自己表現時代”到来か?
万博会場に異変。「未来展示」は背景に
2025年、期待と不安が入り混じるなか開幕した国際博覧会――通称「未来万博」。
各国のパビリオンが最新技術を駆使した展示を繰り広げ、AI、宇宙開発、サステナブル都市など、未来の社会像を体感できるとあって、開幕前から大きな注目を集めていた。
ところが、蓋を開けてみると、**一番目立っているのはパビリオンではなく、“一般来場者”**だった。
最新型AIロボットの説明を聞こうとすると、横にはゴシックドレスに身を包んだ謎の貴族。
宇宙開発パネルを覗き込めば、初音ミク風のツインテールをなびかせた青年がセルフィーを撮っている。
エコエネルギー展示の前では、光る甲冑姿の一団が「撮影どうぞ!」とポーズを決める異様な光景が繰り広げられているのだ。
何が起きているのか?「推し活」と「承認欲求」の融合
現地取材を試みたところ、多くの来場者が「推し活の一環」「SNS映えを狙った」と語っていることが分かった。
彼らは特定のアニメ・ゲームキャラクター、あるいはオリジナル設定の未来人を自作コスプレで表現し、それを会場で発信することを目的に来場しているのだ。
ある20代女性(キラキラ制服風の衣装で来場)は語る。
「未来の万博って、未来の自分を見せる場所でもあるじゃないですか?だから、私なりの未来像を表現しました!」
また、SNS分析会社「トレンドリンクス」によると、開幕後わずか1週間で、
「万博コスプレ」タグ付き投稿が3万件超、リポストを含めると50万件以上に拡散しているという。
この状況を、ネットユーザーたちは皮肉を込めて「承認欲求モンスターの祭典」と呼び始めた。
なぜここまで拡大したのか?背景にある“社会構造”
今回の現象は単なる奇行ではない。
そこには、現代社会における**「自己表現ニーズの爆発」**という大きな流れがある。
自己表現=自己実現時代へ
20世紀の万博は、「国家の威信」「技術力の誇示」が主な目的だった。
しかし21世紀、特にSNS以降の社会では、「個人がどれだけ自己表現できるか」が価値の中心になりつつある。
未来都市の模型よりも、「未来を体現する私」の方が注目を集めるのは、ある意味で必然だったのかもしれない。
コロナ禍で爆発した“リアル自己表現欲”
加えて、コロナ禍によりリアルな交流機会が激減した影響も大きい。
数年間にわたるマスク生活、オンライン授業、リモートワークによって抑圧された「見てもらいたい」「感じてもらいたい」という欲求が、リアルイベントの復活とともに一気に爆発した格好だ。
万博運営側はどう見ているのか?
万博広報部はこの件について「個人の自由な表現を尊重したい」としながらも、
「展示物の見学や安全確保に支障が出る場合は、注意喚起を行う」とコメントしている。
事実、一部パビリオンでは、
- 「大型コスチュームでの展示エリア進入禁止」
- 「自撮り棒持ち込み禁止」
- 「撮影は専用エリアのみ」
といったルール改定が急遽行われるなど、対策に追われている。
また、海外メディアからも「日本型自己表現社会の縮図」「未来ではなく現在を映す祭典」と報じられ、国際的にも注目を集めている。
今後はどうなる?
もしこの流れが加速すれば、次の展開も十分にあり得る。
- 「公式コスプレデー」創設
運営公認のコスプレイベントが開催され、パビリオンとのコラボも進むかもしれない。 - 「未来自己表現部門」創設
未来都市の設計よりも、「未来の自分をいかに表現できるか」を競う新部門が設けられる可能性も。 - テーマが“未来社会”から“未来個人”へシフト
未来を形作るのは国家や企業ではなく、ひとりひとりの想像力と発信力である、という価値観の転換が進むかもしれない。
まとめ:「万博は未来を見る場所」ではなく、「未来を演じる場所」へ
今回の「パビリオンより目立つ一般人」現象は、単なるSNS映え競争を超え、
現代社会における**“承認欲求の進化”、そして“自己表現こそが未来”**という時代のリアルを突きつけた。
パビリオンの最先端ロボットも、カーボンニュートラル都市も素晴らしい。
だが、そこに立つ私たち自身が、「どんな未来を演じ、どんな自己を発信するか」が、
結局のところ最も強く、そして最も目立つのかもしれない。
未来万博――
そこに立つのは、最新技術だけではない。
全身で未来を叫ぶ、“今を生きるモンスターたち”である。
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