概要
派手さもスピードもない。だが商店街の新たな注目株となったのは、一見地味な小型バスだ。大都市や観光名所を結ぶ豪華なバスツアーとは違い、「超」がつくほどマイナーな小型路線バスに乗車し、地元の景色や商店街の空気をのんびり満喫する。20代から50代にかけ、SNSなどでもじわじわと人気が広がっているという。なぜ地味なのにハマる人が続出するのか。その魅力を深掘りしてみた。
一見『地味すぎる』小型バスツアーの意外な人気の理由とは？
観光化されていない『本物』の日常風景
そもそも、今回話題になっている小型バスは、いわゆる『コミュニティバス』と呼ばれる地域密着型の路線バスだ。派手なラッピングや最新設備などはなく、素朴なバスに乗り込み地元商店街や住宅街を巡るだけというシンプルなスタイル。しかし、そこにこそ魅力がある。
特産品をアピールする大きな看板が立ち並ぶ観光地よりも、普通に人が生活を営んでいる街並みや商店街の個性豊かな店主たちとの触れ合いが、参加者にとっては非常に新鮮な体験になっているようだ。自分の知らなかった地元の新発見につながり、「面倒で退屈」と思っていた場所が『意外と味わい深い』観光スポットへと変わるという。
狭い車内が『特別な空間』を生み出す？
もうひとつのクセになる理由として、「狭い空間」にあるという声も多い。大型観光バスと異なり、乗客は10数名ほど。常連さんも多く、顔見知りが増えていきバス内にコミュニティが誕生するケースもあるという。「バス内で店のおすすめ情報を教え合ったり、景色の感想を言い合ったりしているうちに、妙な連帯感が芽生える。これがクセになるんですよ」と参加した30代男性は語った。
クセになる人気体験の実例
商店主たちとの予想外の交流も人気に一役
商店街の若手団体が企画した「ゆるバス旅イベント」では、地域のお店が途中下車ポイントとなり、バスが店の前で短時間停車。乗客が地元の名店や職人たちと気軽に交流できる仕組みだ。実は全国的にもこうしたケースが増え、商店街や地域の古いお店がバス旅の影響で若い客にも知られるようになっている。
参加者の一人、「いつも車や自転車で素通りしていた場所が、こんなに面白い店の集まりだと気が付きました」と話す20代女性。地味だと思っていた体験が実際にやってみると感動的で、地域の愛着を再発見させるきっかけにもなっている。
科学データからみる『路線バス旅の癒し効果』
英国サセックス大学の研究（2018）によれば、自動車やバスなど一定の速度で走る乗り物に揺られるとき、人は「α波を出しやすく、心と身体がリラックス」することが分かっている。わずかな揺れと穏やかなペースで進むバス旅体験には、科学的にもリフレッシュ効果があるのだという。
実際に、「バスに揺られながら特に目的もなく景色をぼーっと眺めるだけで日頃の悩みが消えてしまった」といった反応は少なくない。デジタルデトックスやメンタルヘルスの改善にもつながるこの旅が、ストレスを抱える現代人にじわじわ浸透し始めたのも納得だ。
まとめ
『バズる』時代には派手で華やかな旅が注目されやすいが、身近で地味なはずの小型路線バスがひそかなブームを呼んでいる。そこには、商店街や地元の日常をリアルに楽しむ魅力や、狭い車内ですれ違った乗客や店主たちとの思わぬ出会い、一見非効率に思えるバス旅が脳にもたらす癒しの効果が、じわじわと人を引きつけることにつながってものだ。一見地味だが、妙にクセになる旅。あなたも一度、近くの路線バスにゆられてみてはいかがだろうか？
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